系統用蓄電池への参入を考えるとき、
「結局、どのエリアがいいの?」
と気になる方も多いのではないでしょうか。
北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州。
同じ系統用蓄電池でも、エリアによって電力需給や再生可能エネルギーの導入状況、系統の状況、競争環境などは異なります。
実際、長期脱炭素電源オークションの結果を見ても、エリアによって応札容量・落札容量には大きな差があります。
では、
「落札が多いエリア=系統用蓄電池の狙い目」
と考えてよいのでしょうか。
今回は、2026年9月時点で公表されている長期脱炭素電源オークションの結果をもとに、エリア別の落札状況を比較しながら、数字から何が読み取れるのか、実際のエリア選びでは何を見るべきなのかを考えていきます。
まずは最新の長期脱炭素電源オークションを確認
2026年9月現在、最新の約定結果として公表されているのは、**長期脱炭素電源オークション(応札年度:2025年度)**です。
長期脱炭素電源オークションは容量市場の一部で、脱炭素電源への新規投資を促進し、中長期的な供給力を確保することを目的とした制度です。
2025年度のオークションでは、蓄電池を含むさまざまな脱炭素電源が応札しています。
ここで注意したいのが、「蓄電池だけの全国データ」と「エリア別に公表されているデータ」は別のものという点です。
蓄電池については全国の応札・落札状況が電源種別に公表されていますが、エリア別の応札容量・落札容量には、蓄電池だけではなく、長期脱炭素電源オークションの対象となる複数の電源が含まれています。
そのため、本記事ではエリア別の数字を**「蓄電池の落札率」ではなく、各エリアにおけるオークション全体の状況を見るための参考情報**として扱います。
蓄電池だけを見ると、落札率は46%
まず、全国の蓄電池の状況を見てみましょう。
2025年度の長期脱炭素電源オークションでは、蓄電池の応札容量は125.1万kWとなり、落札率は**46%**でした。
つまり、蓄電池への投資が活発になっている一方で、
「蓄電池なら応札すれば落札できる」
という状況ではありません。
案件が増えていくなかで、応札価格や事業計画なども含めた競争を意識する必要があります。
では、エリア全体の落札状況にはどのくらい違いがあるのでしょうか。
エリアによって落札状況はどのくらい違う?
2025年度の長期脱炭素電源オークションでは、全国で1,085.6万kWの応札があり、そのうち729.9万kWが落札されました。
※重要:以下のエリア別数値は「蓄電池のみ」のデータではありません。長期脱炭素電源オークションの対象となる複数の電源を含むエリア全体の応札容量・落札容量です。
| エリア | 応札容量 | 落札容量 | 参考:落札割合 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 106.3万kW | 101.6万kW | 約96% |
| 東北 | 278.1万kW | 196.6万kW | 約71% |
| 東京 | 231.4万kW | 182.2万kW | 約79% |
| 中部 | 4.7万kW | 4.7万kW | 100% |
| 北陸 | 91.0万kW | 75.9万kW | 約83% |
| 関西 | 184.4万kW | 13.1万kW | 約7% |
| 中国 | 39.2万kW | 27.2万kW | 約69% |
| 四国 | 21.6万kW | 7.5万kW | 約35% |
| 九州 | 128.8万kW | 121.1万kW | 約94% |
※落札割合は、公表されている応札容量と落札容量から単純計算した参考値です。
※上記のエリア別データは蓄電池のみの集計ではありません。
こうして比較すると、エリアによって応札容量と落札容量の関係にかなり大きな差があることが分かります。
北海道・九州は応札容量に対して落札容量が大きい
まず目につくのが、北海道と九州です。
北海道では、
応札容量:106.3万kW
落札容量:101.6万kW
九州では、
応札容量:128.8万kW
落札容量:121.1万kW
となっています。
公表された数字から単純計算すると、どちらも応札容量に対する落札容量の割合は9割を超えています。
数字だけを見ると、
「北海道や九州は狙い目なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、ここで注意が必要です。
このエリア別データには蓄電池以外の電源も含まれているため、
「北海道・九州では蓄電池が9割以上落札された」
という意味ではありません。
それでも、エリアによってオークションへの応札・落札状況が大きく異なることを知る材料にはなります。
東北・東京は落札容量そのものが大きい
次に注目したいのが、東北と東京です。
落札容量を見ると、
東北:196.6万kW
東京:182.2万kW
となっており、2025年度のオークションでは大きな規模となっています。
一方で、応札容量も、
東北:278.1万kW
東京:231.4万kW
と大きくなっています。
つまり、
「落札容量が大きい=競争が少ない」
というわけではありません。
エリアを見るときは、落札された容量だけでなく、そのエリアにどの程度の応札が集まっているのかも一緒に見ることが重要です。
関西は応札容量と落札容量に大きな差
今回の結果でもうひとつ目につくのが関西です。
関西では、
応札容量:184.4万kW
に対して、
落札容量:13.1万kW
となりました。
公表された数字から単純計算すると、約7%です。
他のエリアと比較しても、応札容量と落札容量に大きな開きがあります。
ただし、これを見て、
「関西では系統用蓄電池をやらない方がいい」
と判断することはできません。
長期脱炭素電源オークションの結果は、応札価格や電源構成、募集量、制度上の条件など、さまざまな要因によって決まります。
また、今回のエリア別データは蓄電池だけの結果ではありません。
そのため、一年度の落札状況だけで、そのエリアの系統用蓄電池事業の将来性を判断することはできないという点には注意が必要です。
中部・北陸・中国・四国はどうだった?
その他のエリアも見てみましょう。
2025年度の結果では、
中部:応札4.7万kW → 落札4.7万kW
北陸:応札91.0万kW → 落札75.9万kW
中国:応札39.2万kW → 落札27.2万kW
四国:応札21.6万kW → 落札7.5万kW
となっています。
公表された応札容量と落札容量から単純計算すると、中部は100%、北陸は約83%、中国は約69%、四国は約35%です。
特に中部は落札割合だけを見ると100%ですが、応札容量そのものが4.7万kWと他エリアに比べて小さいため、
「100%だから中部が一番狙い目」
と単純に考えることはできません。
反対に、北陸は応札91.0万kWに対して75.9万kWが落札されており、今回の結果では比較的大きな落札容量となっています。
つまりエリアを比較するときは、落札割合だけではなく、「どのくらいの容量が応札され、そのうちどのくらいが落札されたのか」までセットで見ることが重要です。
また、ここで示している数字も、蓄電池のみを集計したものではありません。
沖縄のデータがないのはなぜ?
今回の公表資料では、エリア別の結果は北海道から九州までの9エリアで整理されています。
そのため、本記事でも北海道から九州までの9エリアを対象に比較しています。
沖縄を含む離島などについては、本土9エリアとは制度上の扱いや条件が異なるため、個別に最新の制度情報を確認する必要があります。
「落札割合が高い=狙い目」ではない
ここが、今回のエリア比較で特に押さえておきたいポイントです。
エリア別の数字を見ると、
「落札割合が高いエリアで蓄電池をやればいいのでは?」
と考えたくなります。
しかし、系統用蓄電池のエリア選びは、それほど単純ではありません。
実際の事業では、
- 系統接続が可能か
- 接続までどのくらい時間がかかるか
- 土地を確保できるか
- 設備費・工事費はいくらか
- 卸電力市場の価格動向はどうか
- 需給調整市場などでどのような収益機会があるか
- 今後、そのエリアにどのくらい蓄電池が増える可能性があるか
といった複数の条件が事業性に影響します。
例えば、現在の落札状況が良く見えるエリアでも、系統接続に時間がかかったり、今後多くの蓄電池が参入したりすれば、事業環境が変わる可能性があります。
反対に、今回の落札状況だけでは目立たないエリアでも、案件の条件によっては十分に事業性を検討できる可能性があります。
つまり、オークションの落札状況は重要な情報のひとつですが、それだけで「狙い目」を決めるものではありません。
さらに見たいのは「これからどれだけ蓄電池が増えるか」
エリアを検討するときは、現在の数字だけでなく、
すでに接続されている蓄電池
+
これから接続を予定している蓄電池
という時間軸で見ることも大切です。
蓄電池の新規参入が増えれば、市場の競争環境や系統接続の状況が変化する可能性があります。
そのため、「今どうなっているか」だけではなく、「これからどう変わる可能性があるか」まで見ることが、エリア選びのヒントになります。
エリア選びは「ひとつの数字」で決めない
系統用蓄電池への投資を考えるとき、分かりやすい数字にはどうしても目が向きます。
落札割合。
市場価格。
土地価格。
系統接続費用。
どれも重要な情報です。
しかし、ひとつの数字だけでエリアを決めてしまうと、案件全体の事業性を見落とす可能性があります。
例えば、
落札状況は良く見えるが、系統接続に時間がかかる。
市場価格差はあるが、競合する蓄電池が増えている。
土地は安いが、接続費用や工事費まで含めると投資額が大きくなる。
といったケースも考えられます。
だからこそ、重要なのは、
「どこが一番落札されているか」
ではなく、
「そのエリアで、自分の案件が成立するか」
という視点です。
エリア別の落札状況は、その判断をするための入口として活用するのがよいでしょう。
まとめ|「狙い目」は落札状況だけで決めない
2026年9月現在の最新の長期脱炭素電源オークションを見ると、エリアによって応札容量・落札容量には大きな差があります。
北海道や九州では応札容量に対して落札容量が大きく、東北や東京では落札容量そのものが大きい結果となりました。
一方、関西では今回、応札容量と落札容量に大きな開きが見られます。
ただし、この数字だけで、
「北海道や九州が系統用蓄電池の狙い目」
「関西は避けた方がいい」
と判断することはできません。
今回のエリア別データは蓄電池だけを集計したものではなく、実際の系統用蓄電池事業には、系統接続、市場環境、土地、設備費、競争状況など、さまざまな条件が関係するからです。
エリア選びでは、
現在のオークション状況
+ 系統接続の状況
+ 市場環境
+ 今後の蓄電池の増加状況
などを組み合わせて見ることが重要です。
「今、落札割合が高い場所」と「自分の案件に適している場所」は、必ずしも同じではありません。
ひとつの数字だけで判断せず、エリアごとの状況と案件条件を組み合わせながら検討していくことが、系統用蓄電池のエリア選びでは重要になります。
参考情報
本記事の長期脱炭素電源オークションに関する数値は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表する「容量市場 長期脱炭素電源オークション約定結果(応札年度:2025年度)」をもとに整理しています。
※本記事に関する注意事項
本記事は、2026年9月時点で公表されている情報に基づく一般的な情報提供を目的としています。
制度、市場ルール、系統連系要件、公表データ等は今後変更される場合があります。
また、本記事で示したエリア別の応札容量・落札容量は、蓄電池のみではなく、長期脱炭素電源オークションの対象となる複数の電源を含む数値です。
そのため、各エリアにおける蓄電池の落札率や将来の収益性を示すものではありません。
実際の案件検討・投資判断にあたっては、OCCTO、経済産業省、資源エネルギー庁、各一般送配電事業者等が公表する最新情報および個別案件の条件をご確認ください。
また、本記事の数値や説明は、特定エリアにおける投資成果や収益を保証するものではありません。

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