海外輸送ってどこで受け取るの?どこから買主側の責任になる?

海外から蓄電池や設備を購入するとき、

「商品はどこで受け取るの?」
「どこまで売主が運んでくれる?」
「輸送中に破損したら、どちらがリスクを負うの?」

と迷うことがあります。

そこで確認しておきたいのが、EXW・FOB・CIF・DPU・DDPなどの「インコタームズ(Incoterms®)」です。

難しい貿易用語に見えますが、ポイントは大きく2つです。

① 売主がどこまで輸送費や手続きを負担するのか
② 輸送中の紛失・破損などのリスクが、どこから買主側に移るのか

今回は、海外から蓄電池を輸入するケースをイメージしながら、**「結局どこから買主側のリスクになるの?」**という視点で簡単に解説します。

目次

まずは輸送の流れをイメージしよう

海外から日本へ蓄電池を輸入する場合、大まかには次のような流れになります。

海外の工場 → 輸出港 → 船 → 日本の港 → 国内輸送 → 指定場所

この流れのなかで、

売主がどこまで費用や手続きを負担するのか
貨物の紛失・破損などのリスクがどこで買主へ移るのか

が、インコタームズの条件によって変わります。

「リスク移転」と「所有権移転」は別

ここで、最初にひとつ重要な点があります。

インコタームズで定められている「リスクの移転」は、主に輸送中の貨物の滅失・損傷などについて、どちらが危険を負担するかという考え方です。

一方で、商品の所有権がいつ売主から買主へ移るかを、インコタームズが決めているわけではありません。

所有権の移転時期は、売買契約や準拠法などによって別途決められます。

そのため、本記事でいう「ここから買主側」という表現は、所有権ではなく、主に貨物の輸送リスクが買主側へ移る地点を指しています。

EXW|工場で引き渡したら、そこから買主側

EXW(Ex Works/工場渡し)

一番わかりやすく言うと、

「工場などの指定場所で商品を用意しました。ここから先は買主側でお願いします」

という条件です。

例えば中国の工場で蓄電池を受け取る契約であれば、売主は基本的に工場などの指定場所で商品を買主側に引き渡します。

どこから買主側?

🏭 海外工場 | 🚚 → ⚓ → 🚢 → 🇯🇵 → 🚚

         ↑
ここから輸送リスクは買主側

つまり、引き渡し後に工場から港まで運んでいる途中でトラブルが発生した場合も、原則として輸送リスクは買主側になります。

輸送を買主側でコントロールしやすい一方、輸送手配や通関など、買主側の負担範囲が広い条件です。

FOB|船に積み込んだら、そこから買主側

FOB(Free On Board/本船渡し)

FOBでは、売主が商品を輸出港まで運び、輸出通関を行い、指定された船に積み込みます。

そして、

商品が本船上に積み込まれた時点で、貨物の輸送リスクが買主側へ移ります。

どこから買主側?

🏭 → 🚚 → ⚓ 🚢 | ~~~ → 🇯🇵

         ↑
船に積み込んだら、ここから買主側のリスク

つまり、

工場 → 輸出港 → 本船への積込み

までは売主側。

本船に積み込まれた後の輸送リスク

は買主側です。

海外から日本へ商品を輸入するときによく目にする条件のひとつです。

CIF|日本まで運賃を払ってくれる。でもリスクは船積み時点で買主側

CIF(Cost, Insurance and Freight/運賃保険料込み)

CIFは少し注意が必要です。

売主が指定された到着港までの海上運賃と保険料を負担します。

例えば、

CIF Yokohama

なら、売主が横浜港までの海上運賃と保険を手配・負担します。

ここだけを見ると、

「横浜港に到着するまで売主側のリスク?」

と思ってしまいそうですが、そうではありません。

どこから買主側?

🏭 → ⚓ 🚢 |~~~~~~🚢~~~~~~| 🇯🇵

      ↑              ↑
リスクはここから買主側    運賃はここまで売主負担

つまり、

費用は売主が日本の港まで負担する。
一方で、輸送リスクは輸出港で本船に積み込まれた時点で買主側へ移る。

ということです。

これがCIFで特に間違えやすいポイントです。

「誰が輸送費を払うか」と「誰が輸送中のリスクを負うか」は別物と覚えておきましょう。

DPU|指定場所で荷下ろしが終わるまで売主側

DPU(Delivered at Place Unloaded/荷卸込持込渡し)

DPUでは、売主が契約で決めた指定場所まで商品を運び、さらに荷下ろしまで行います。

例えば日本国内の倉庫を指定した場合、

海外工場 → 海外港 → 海上輸送 → 日本の港 → 国内輸送 → 倉庫 → 荷下ろし

まで売主側が輸送リスクを負います。

どこから買主側?

🏭 → 🚢 → 🇯🇵 → 🚚 → 🏢 → 📦荷下ろし完了 |

                     ↑
             ここから買主側のリスク

指定場所に到着しただけではなく、荷下ろしが完了したところでリスクが買主側へ移るのがポイントです。

ただし、輸入通関や関税等については、原則として買主側が担当します。

DDP|指定場所まで売主側。輸入通関も売主が対応

DDP(Delivered Duty Paid/関税込持込渡し)

DDPは、今回紹介する条件のなかでも、売主側の負担範囲がかなり広い条件です。

売主が指定場所まで商品を運び、輸出通関だけでなく、輸入通関や関税なども原則として売主側が担当します。

どこから買主側?

🏭 → 🚢 → 🇯🇵 → 🚚 → 🏢 | 📦

               ↑
     指定場所で引き渡されたら、ここから買主側のリスク

ただし、DPUとの大きな違いがあります。

DPU → 売主が荷下ろしまで行う
DDP → 売主は原則として荷下ろし前の状態で引き渡す

そのため、「指定場所まで全部運んでもらう」という点は似ていますが、荷下ろしを誰が行うのかまで確認しておく必要があります。

5つを「どこから買主側?」で比較

条件売主の主な負担範囲輸送リスクが買主側へ移る主な地点
EXW工場などの指定場所で引き渡し指定場所で引き渡した時点
FOB輸出港で本船に積み込むまで本船に積み込まれた時点
CIF到着港までの海上運賃・保険を負担輸出港で本船に積み込まれた時点
DPU指定場所までの輸送+荷下ろし指定場所で荷下ろしが完了した時点
DDP指定場所までの輸送+輸入通関・関税等指定場所で荷下ろし可能な状態で引き渡した時点

ここで特に覚えておきたいのがFOBとCIFです。

CIFは日本まで売主が海上運賃や保険を負担しますが、貨物の輸送リスクまで日本到着時に移るわけではありません。

FOBもCIFも、基本的に本船に積み込まれた時点で輸送リスクは買主側へ移ります。

「買主側のリスク」=何でも買主の責任、ではない

ここでもうひとつ注意があります。

この記事でいう「買主側のリスク」とは、主に輸送中の貨物の紛失・破損などに関する危険負担が買主側へ移るという意味です。

例えばFOBで本船への積込みが完了した後、海上輸送中に商品が破損した場合、インコタームズ上の輸送リスクはすでに買主側へ移っています。

ただし、

  • 製品そのものに不具合があった場合の製品保証
  • 契約内容と異なる商品が納品された場合の責任
  • 売主の梱包不備などに起因する損害
  • 所有権がいつ買主へ移るか

まで、すべてインコタームズだけで決まるわけではありません。

輸送リスク、費用負担、製品保証、契約上の責任、所有権は、それぞれ分けて確認する必要があります。

蓄電池の輸入では、さらに確認しておきたいこと

蓄電池、特にリチウムイオン電池を海外から輸送する場合は、一般貨物以上に輸送条件の確認が重要です。

見積書に「FOB」「CIF」「DDP」などと書かれていたら、価格だけでなく、

  • 実際の引渡し場所はどこか
  • どこから輸送リスクが買主側になるのか
  • 海上運賃は誰が負担するのか
  • 輸送保険は誰が手配するのか
  • 保険の補償範囲はどこまでか
  • 輸出・輸入通関は誰が行うのか
  • 関税や輸入消費税は誰が負担するのか
  • 日本到着後の国内輸送は含まれているのか
  • 現地での荷下ろしは誰が行うのか
  • 梱包や危険物輸送に必要な対応は誰が行うのか

まで確認しておくことが大切です。

また、「FOB」など条件名だけで契約するのではなく、

FOB Shanghai Port, Incoterms® 2020

のように、指定場所・港名と適用するインコタームズの版まで明確にしておくことが重要です。

まとめ|「どこまで運んでくれる?」だけではなく「どこからリスクが移る?」を確認しよう

EXW・FOB・CIF・DPU・DDPを見るときは、

「売主がどこまで運んでくれるのか?」

だけを見るのではなく、

「貨物の輸送リスクはどこから買主側へ移るのか?」

までセットで確認することが重要です。

特にCIFのように、費用を負担する地点とリスクが移る地点が異なる条件もあります。

また、インコタームズは所有権の移転時期を決めるルールではありません。

海外から蓄電池を調達するときは、製品価格だけで比較せず、

費用負担
輸送リスク
通関手続き
荷下ろし
保険
所有権や契約上の責任

をそれぞれ分けて確認しておきましょう。

「どこまでの価格なのか」
「どこから輸送リスクを負うのか」

が分かるだけでも、海外調達の見積書はぐっと読みやすくなります。


※本記事に関する注意事項

本記事は、掲載時点の一般的な貿易実務およびIncoterms® 2020の考え方に基づき、海外輸送について一般的な情報を提供することを目的としています。

実際の費用負担、危険負担、通関手続き、保険、所有権の移転時期、製品保証その他の契約上の責任は、個別の売買契約、運送契約、保険契約、準拠法、輸送ルート、貨物の内容等によって異なります。

なお、Incoterms®は貨物の所有権の移転時期を定めるルールではありません。 実際の取引にあたっては、売買契約書、見積条件、保険条件等を確認し、必要に応じて通関業者、フォワーダー、専門家等へご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次